2011年10月1日土曜日

アマ無線のクリティカルマス

昨今アマチュア無線においてもIT化が進み、局免許に関する電子的処理から
実通信の方法に到るまでコンピュータの浸透は強くなったと感じる。
ここで、アマ無線に関してもITビジネスの視点から読み解くとしよう。

マーケティングの世界ではクリティカルマス(Critical Mass)という用語がある。
主に商品の普及率に関しての事だ。
ここ最近筆者はアマ無線の中でもAPRSに注目して出来事を執筆してきた。
分かり易いと思うので、このAPRSを題材に進めたいと思う。

無線も運用をする為には、まず購入が必要である。APRSに限らず
これから無線を始めようとする人では無線機購入、APRS運用に
興味を持っている人若しくは運用している人では
トラッカー購入やAPRS対応無線機を追加購入した時の事を想像して欲しい。


先程あげた普及率はどのようなマーケットでも以下の図に近い動きをする。

Innovators (2.5%)
革新者、冒険的な人。



Early Adopters (13.5%)
初期採用者


Early Majority (34%)
初期追随者

Late Majority (34%)

後期追随者

Laggards (10%)
遅延者



筆者がAPRSを始めた数年前、日本だけで見れば『アーリーアダプター』の立場だったが、
世界の進行状況から見た私の立場は「レイトマジョリティ」だった。
全世界規模のグローバルな遊びなので、日本と世界では こうも違うのである。
しかし、近年日本各無線機メーカーがAPRS対応機の発売をする事で普及具合と
この歴史感もKENWOOD社製モービル機種 TM-D710や、昨年下旬に発売された
同社製 TH-D72の登場で少し位置関係が変わりつつあるようにも思う。

では、APRSでイノベーターとは誰なのか?
確定している1人は開発提唱者であり産みの親 WB4APR Bob Bruninga氏である。
続く 人材としては、APRS運用に関する取り纏めを行う団体、
APRS Working Group (通称 APRS-WG ) である。
日本ではワーキンググループとして JAPRSX という団体が公式に認められている。

筆者自身は 当時日本や東アジア地域全体においてのAPRSサーバーへの
レジスト(登録)認証作業を行っていた JA1OGS Art氏に招待されて始めた。
このArt氏もイノベーターに分類される人と言えるが、どちらかと言えば
中期~後期のイノベーターだったと言える。
 日本では別名オピニオンリーダーとも呼ばれるアーリーアダプター類の人によって
爆発的に人気が上がった。代表的な存在とすれば、イバラキネットのJM1CZS 篠崎氏や
JF7ELG 木幡氏、JA6BHL 上村氏の活躍があったからこそと言える。




爆発的に普及が始まった後、1つの周波数を使って遊ぶこの趣味では問題が多発し始めた。
● 1つはアーリーマジョリティーに類する人々にルールの指導が行き届かなくなった事。
●  英語文献を読み解かず独自運用方法を提唱する人の発生進行を食い止められなかった事

無線機メーカーは自社製品が売れればいいというだけの無責任スタイルであり、
結果イノベーターの教えが届かず、各アーリーアダプターの耳当たりの良い言葉が先行し
実用的と言うには程遠い遊びに定着してしまった。
今となっては、各都道府県のアーリーマジョリティーの人がアーリーアダプターの気分だったり、
フリをしながら適当な噂や日本語文献だけを都合の良いように解釈し運用している始末だ。


これから日本でAPRSを始めようとしている人は「レイトマジョリティ」という位置にある。
先人の知恵を的確に学習する為に、是非アーリーマジョリティーの人ではなく、
イノベーターの人達が集う場所で勉強して頂きたいと願う。
最近はオピニオンリーダーの人達も痛い経験を教訓に結構再勉強していると感じる。
イノベーターな人は限られた地域にしかいない存在だが、アーリーアダプターな人は
結構各地に居るはずだ。

APRSのビーコン1つは 静かな水面に投げる一石に等しい。
サブマリン(潜水艦)の世界でもビーコンを打つ事は敵に自分の居場所を教え
自らを攻撃してくれと言っているようなものだ。
放つ1つのビーコンが自身の楽しみに繋がるか、どれだけの人を巻き込み
騒動等の全世界的な悪影響を及ぼすかは、いかに習熟しているかにかかっている。

当記事を閲覧中の諸君が適切な運用に注力してくれる事を願いたい。


今、先人のAPRS運用者は立場がラガードにありながらもテクニシャンな輝ける星を探している。
あえて言葉を濁さず言い切るなら、VertexStandardの偽物のようなAPRS対応無線機を買って
インターネット上の地図に自分のSymbol(アイコン)が表示されて満足感に浸るだけのような人には
全く興味が無い。
WB4APR氏やAPRS-WGの助言を乞い、しっかりとした製品作りをしているKENWOOD社製の
APRS対応無線機を購入し、必要で最適な外部接続TNCも選び、必要に応じてI-Gateや
Digipeater構築に先頭を勤める勢いで臨んだり、時にKG-ACARCで有名な K.G氏のように
日本版APRSソフトウェアの開発に踏み切るだけの力を持ち合わせている人を待ち望んでいる。
それが今の日本においての希望であり光だ。

企業が作ったのでは面白くない。アマチュアではない。
企業はアマチュア無線家がアマチュア無線家らしく動ける環境作りと後押しをしてくれればいい。
KENWOOD社はその役割をAPRSにおいては十二分に理解し果たしてきた。





商売の世界では普及率16%の理論というものがある。
具体的に言えば、利用者数が16%以上に達すれば、以後爆発的に普及するという意味である。
APRSにおいては既に16%を越え、日本国内での限界を迎えつつあると筆者は考えている。
何が限界って? システム自体が限界なのではなく、適切な運用で秩序を保つ事がね。




参考
● イノベーター理論 http://www.jmrlsi.co.jp/mdb/yougo/my02/my0219.html

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